脇本 浩 コーチの紹介

僕がサッカーを始めたのは、中学生の時でした。

今では小さい頃からサッカーをやっている子も多いので、遅いくらいかもしれません。

それまではずっとソフトボールをやっていたのですが、ソフトボールや野球は全員丸坊主にする決まりがあったので、中学生になったらそれは嫌だな、と思ったからサッカーを部活に選んだのがきっかけでした。

中学生から始めた僕は全くの素人であり、体も小さかったので、選手たちに跳ね飛ばされたり、無理なプレイをしたりして骨折などの大きな怪我に見舞われました。

しかし、初めてボールを追いかけた時のあの興奮は忘れることができません。

 

そして、上手な周りに負けたくないと思う生来の負けず嫌いの性格があって、きっと30年間続けてきたのだと思います。

僕は今、中学生のジュニアユースチームのHAJAXSと小学生対象のHAJAXSスクール、両方で指導者として活動しています。

指導者歴は2019年時点で12年になりました。

 

僕が指導を行う上で大切にすることが2つあります。

1つは【練習から100%の力で行うこと】、2つ目は【プレイ中に自分で考える癖をつけること】です。

この2つには、僕の実体験が大きく関わっています。

 

1つ目の練習から100%の力を出すことは、僕が社会人チームに所属している時にスペインの留学生たちと試合をした時に実際に彼らから言われたことでした。

初めて彼らとぶつかった時、何もかもレベルが段違いだと痛感しました。

戦術や技術、体の大きさだけではありません。

彼らが練習試合なのにも関わらず、全力でぶつかってくるというサッカーにかける思いが違ったのです。

しかし、それを彼らに伝えるとこんな答えが返ってきました。

「どうして?怪我をするのは自分の責任ではないの?練習の時に本気にやらなければ、どうやって本番で本気を出すの?」

当たり前のようにそう言った彼らに、僕は衝撃を受けました。

 

もちろん、僕もチームメイトも真剣に取り組んでいました。

しかし、練習では怪我をしたら次の試合に出られなくなるし、社会人だったので普段の仕事にも支障が出てしまうことを倦厭してどこかで怪我を避けて無理をしないようにしていたことは事実でした。

試合に出たとしても練習の時に自分への甘さが出てしまったとしたら、それが癖になってしまいます。

そしてそれが、いつしか本当の自分のプレイになってしまうことに僕は恐怖を感じました。

そのことを知ったのは20代後半でした。もっと早く知りたかったと心から思います。

だから、スクールでもチームでも僕は

「練習で一生懸命やらないなら本番できないよ」

とよく口にしています。それには、一生懸命やっていると思っていたけれど、どこかで手を抜くことを覚えた自分への後悔があるからです。

そして、プレイ中に自分で考える癖をつけることの重要性は、高校時代のコーチであり、僕のサッカー人生の恩師から強く影響を受けています。

 

高校の部活でコーチをしていた先生は、当時国体の監督もしていた方でした。

 

僕はずっとボジションはFWだったのですが、先生は唐突に「DFをやりなさい」と言われ。しばらくDFをやったことがあります。

当時は不思議で仕方なく、僕がFWに向いていないからDFなったのかとも考えた瞬間がありました。

それでも、自分に与えられたポジンションだからやるしかないと思ってがむしゃらにプレイしたいことを覚えています。

しばらくDFでプレイをしていましたが、またFWに指名されました。

その時に、なぜポジションを変更したのかという理由を教えてくれました。

 

「DFをやってみてどうだった?

DFはFWをゴールに進ませないための最後の砦のポジションだから、どう攻められたら困るのかを体感できただろう。

これは、実際自分が体験しなければ分からないことだ。それを考えながらプレイできていたなら、この経験は絶対に君の力になる。

自分にとって何が力になるのかを考えながら練習をしてみなさい。」

僕は慣れないポジションをこなす事に無我夢中でしたが、実際にFWに戻ってみると今まで考えもしなかったDFの”穴“になる部分が明確になったり、どこを狙えばよりゴールに近づけ、チームのために働ける自分になるのかがわかったりするようになりました。

 

僕は自分が何も考えていないとは思っていませんでした。

しかし、先生の言葉を改めて振り返ると、僕は考えてプレイをしていたわけではなかった。

ただボールを追うのではなく、考えてプレイすることで自分の能力を伸ばすことができるし、考えることで自分のプレイに対して根拠や裏付けになって自信にもつながります。

 

 

サッカーはベンチで試合中にコーチや監督が色々指示を飛ばしていますが、実際にその局面になって戦うのは選手たちです。

 

つまり、自分たちで考えてその局面を切り抜けられるようにならなければ、困るのは選手本人です。

 

試合は相手も本気なので、自分たちの練習通りになるとは限りません。

 

そのため、常に色々なパターンを自分で想定しながら動ける能力が選手には欠かすことができないと思います。

 

だから、僕は中学生のチームの選手には10のうち2~3割くらいヒントで考えて、小学生向けのスクールでは、7〜8割は教えたとしても、高学年ならば2割くらいは考えられるようにと願っています。

自分で考えることは、サッカーだけに役立つことではありません。

色々な局面でその癖は、選手たちを支えてくれると実感したことがあるからこそ、僕の中で確信となっています。

 

僕はかつて、IRMAOのチームの監督を任されていた時期がありました。

その時に印象的な選手が一人います。

彼は、チームに入団した当初は頑固で自分の世界観を何よりも大切にしているような印象の強い選手でした。サッカーの能力はとても高かったのですが、IRMAOでのプレイをすることが決まりました。

 

しかし、彼は仲間に心を開くようになり、年月とともに本来の仲間思いで真面目にサッカーに取り組む人柄が表れるようになりました。

 

だから3年生の時にトップチームに上がる打診がされたのは当然のことでした。

当時のIRMAOの選手たちも皆トップに上がりたい気持ちが強かったので、彼は喜んでトップチームに行くと思っていました。

僕も、彼の能力があればきっとトップチームで活躍できる確信があったので笑って送り出すつもりでいました。

 

ですが、彼は違いました、

「僕はこのIRMAOで、最後まで脇本コーチと一緒にやります」

そう宣言したのです。

 

正直、あの時は驚きました。しかし、それ以上に嬉しかったです。

 

彼とは、今でもたまにショッピングセンターでばったり出会うことがあり、立ち話をします。

なぜあの時にせっかくのチャンスがあったのにトップチームに行かなかったのかを尋ねると、彼はこう言いました。

「脇本コーチがいつも考えなさいって言うから、僕なりに考えました。

トップチームに上がるんじゃなくて、僕は今のIRMAOのメンバーでトップに勝ちたいです。」

 

僕がまるで癖のように言っている言葉を、こうやって彼が何かを選択をする時に思い出してくれたのがとても嬉しかったのを覚えています。

 

練習中には、もしかしたらかつての僕のように

「どうしてコーチはこの練習をさせるのだろう」と思うこともあるかもしれません。

しかし、コーチがそれをするのには必ず意味があります。

 

「自分にはこれは必要ない」とか「こんなことをさせるコーチは自分のことを必要としてないんだ」とか、悪い方向に考えてしまうのは非常に勿体無いです。

 

 

ぜひ、100パーセントの力で練習にのぞみ、自分でなぜそれが起こるのかを考えてみください。

後悔のないくらい頑張って、自分で選択し続けたからこそ、「このチームでこの仲間とやっていて良かった」と心から思えるようになるのですから。

© 2017-2019   TAJOXS.Inc